勝野 露観ガバナー メッセージ
2008-9年度 国際ロータリー第2640地区ガバナー 勝野 露観

私は1月13日から20日までアメリカのサンディエゴに行って参りました。メキシコに近く、非常に美しい港町があります。そこで綿密なスケジュールの基、ロータリーの様々な問題・課題並びにガバナーとしての大切な必須事項をみっちりと勉強させて頂き、実に有意義な経験でした。世界中から、次年度にガバナーになられる方々が集まって参ります。そして、日本語が全く通じない環境の中で勉強してきました。日本人の場合は、初対面で会釈したとしても、不信感を持ったりしますが、外国人の場合は素晴らしい笑顔で挨拶してまいります。日本人が一番苦手なのはコミュニケーションです。初対面の人とはまず壁を作って、相手を調査しチェックしてからでないと、握手や溶け込んで話することが出来ません。もっともっとフランクリーに、そしてマナーを大切にするようにして頂きたい。日本人はもともとマナーがあり、初対面でも相手を重んじるという礼儀作法が、武士道という形で鍛えられてきました。ところが時代が変化し、大切なものを見失っているのが現状です。皆さんは同じロータリアンですので、どうか親しい間柄になっていただきたいと思います。日本人はコミュニケーションが下手だということを、アメリカに行きましてまず感じた次第です。パスとガバナーの皆様は「私はロータリーの良さを国際競技会に行ってわかりました。あれで本当のロータリアンになれたと思います。」と言われます。そのことを私も実感して参りました。


『RIのテーマと強調事項』


次年度は韓国の李東健RI会長です。家業の繊維業を継がれるまではソウル銀行のエリートで、ロータリー歴36年の大ベテランです。強固な信念を持っておられる顔つきをされており、若々しいパワーを持っているよう感じました。彼の場合、幼少年期の頃は戦争などによりまして非常に悲惨な経験をされております。そのような環境の中で育ち、悲鳴と涙、悲しみの中で生きている多くの人々。特に幼い子供たちの、そのような環境の中での生活というものを身をもって知っておられます。子供たちに対する深い愛情が、「子供たちの夢を現実にしよう。形にしよう。」『Make Dreams Real』という次年度のRIテーマを導き出されました。ロータリーとして何が出来るのか?この大きなテーマを私たちに投げかけられました。次に強調事項ですが、ここ数年、同じ事項となっています。「また同じか。」と思われる前に、よく考えていただきたい。いかなる素晴らしい計画やどれだけ崇高な目標であっても、それらを実現するためには長年の努力や人々の力、英知が必要です。簡単に大きな目的が達成できるわけではありません。一度決めたものは絶対にやり遂げる決意と粘りが合ってこそ成就できます。継続して行うことは非常に大切なことです。『継続は力なり。』同じことを繰り返してマンネリ化する人とプロになる人がいます。以前、講演会で聞いた話ですが、イチローは幼い頃から毎日毎日、バットの素振りをしていたそうです。一目でイチローと他の人とのバットの違いがわかったそうです。イチローのバットには血が付いていたそうです。そのイチローがアメリカに行った時、アメリカでは通用しないだろうといった日本の評論家もいたようです。しかし今、アメリカで大活躍していることは、日本人に対しても大きな大きなプレゼントです。「日本人は頭は少しいいかもしれないが、たいしたことはない民族だ。」といわれていましたが、細身の体で一流のプレーが出来ることを証明したことは、「日本人は案外素晴らしい。」と言うことを強くアピールしました。同じことを繰り返すにしても、工夫が大切です。イチローは素振りでも、いろいろな場面を想定しながらバットを振っているそうです。継続して行う際に工夫やアイディアを取り入れることは非常に大切なことです。単年度で物事が成就するということは、基もとおかしなことだと思います。人間は自分自身が幸せになりたいという欲求の他に、人を喜ばせたいと思う心もあります。人を愛したい、人に喜びを与えたいという思いがあります。このような気持ちが生き甲斐に繋がるのであれば、その人生は努力のしがいがある素晴らしいものとなります。そこで大切なのが、美しい笑み、笑顔です。このことを次年度は実戦していただきたいと思います。


それでは、まず強調事項の第1に『水問題』です。水野汚染、水不足、洪水、地球温暖化による海面上昇、大雨など水に関する問題が非常に大きなものになっています。第2に「保健衛生・飢饉』です。皆さん、ご自身の健康に対して大変注意されていますが、まだまだ恵まれない地域がたくさんあります。第3に『識字率の向上(教育問題)』です。日本でも明治時代、この国をよくするためにまず取り組んだことは教育でした。次にRI会長エレクトの要望です。各クラブにおいて、少なくとも10%の会員増強目標を掲げられました。そして各地区において、新クラブを結成するということです。


『地区目標』


続いて地区ですが、RIの方針を取り入れて『夢を現実に。夢を形にしよう!』を地区目標の第1としました。RIの場合は子どもたちを中心としていますが、私たちはもちろん子どもたちも含めていますが、もっと大きな意味合いで取り組みたいと考えています。皆さん、日々暮らしていく上で夢はございますか?皆さんはそんなことはないかと思いますが一般的に見まして、今の世の中は夢がなくなっているのではないでしょうか。夢喪失の時代と言っても過言ではないかもしれません。私たちは夢があるからこそ、現実に苦難があっても生きていけるのではないでしょうか。夢を持つことは大切ですが、持つには能力が必要です。実力や経験、また深い人生観があってこそ打ち立てることが出来ます。現在、夢を見ることを忘れてしまっています。あまりにも自己中心的で欲望のみが肥大化しているように感じます。人間の価値の判断は多くのお金を稼いだから偉いのではなくて、どれだけ真実のものを見る力があるのか、公正な目で物事を見ているのかが大切なのです。私の好きな言葉に、和歌山県が生んだ坂村真民先生の『念ずれば花ひらく』という言葉がありますが、どうか深い念と、深い一途な思いを持って、自分たちの夢を実現するために努力して頂きたい!私たちはロータリーに入会した時に夢がありました。「素晴らしい人間になりたい!」「人生において成功したい!」「ビジネスにおいて成功したい!」等々の夢がありました。以前は人生において成功した方々がロータリーに入会されました。現在は人生において成功しようという思いで入会される方が多くなってきています。会員の皆さんの中には業界を代表されるような方もいますし、また素晴らしい能力と経験をお持ちの方もいます。そのような方々からもいろいろと学んで頂いて、会員の、そしてクラブの夢を現実の形にするためのプロジェクトを考えて頂きたい。そのために大切なのは例会です。卓話などで会員の経験談等の話を聞くことは非常に勉強になると思います。そして一人でも多くの会員に卓話して頂きたいと思います。プログラム委員会の大切さを理解してください。


目標の第2は、「人に喜びを与えよう!」「人の役に立とう!」といったロータリーの精神を甦らせるために、ロータリーの綱領を高く掲げまして『ロータリーの原点に戻ろう!』というテーマです。昨今の日本の各界におきまして、指導的立場にある人々の倫理、道徳が低下しているように感じています。知識では素晴らしいものを持っていても、精神、品格といった面でお粗末な人や、人間の価値を決める本質的なものを、おろそかにしているような人が増えているように思います。そういったものの大切さをアピールしました職業奉仕宣言、決議23-34等を今一度しっかりと勉強して頂きたいと思います。ロータリーの素晴らしい精神を知らずにロータリーに在籍されている方が、あまりにも多いというのが現状ではないでしょうか。"奉仕"は"service"という言葉の日本語訳ですが、"service"は「人を喜ばせたい」「人に喜びを与えたい」「人の役に立ちたい」という意味があります。しかし"奉仕"の第1の意味は「謹んで仕え奉る」、第2番目の意味は「献身的に国家・社会のために尽くす」、第3番目は「商売人がお客さんのために安い値段で提供する」ということです。ロータリーの言葉を日本語に翻訳した時代、軍国主義当時の日本政府の思想統制のもとでは、ロータリーが生き残るためには国家のために、社会に献身的に尽くすという考え方が必要でした。「奉仕の理想」の歌の中からも、そのことが読み取れると思います。今後、皆さんが"奉仕"ということを考える際には、"service"という考え方をしっかりと取り入れて頂きたいと思います。


目標の第3番目は、「会員増強・会員維持」です。目標の第1、第2のことが実行されますと、クラブ会員やクラブの質が上がってきます。質の高い人間がどれだけロータリーにいるか、ということが大切ですので、まずこのことをしっかりと自覚して下さい。そうすれば参加したいと思う方々も出てくるでしょう。年々、自然にロータリーも年代が上がってきますので、新しい若いエネルギーが必要ですので、1人でも多くの会員を増強して頂きたいと思います。本日、次期会長の資料の中に、会員増強の目標に関する用紙を入れておりますので、記入して頂き早急に提出願いたいと思います。


第4番目に、「新世代に力を注ごう!」ということです。インターアクト、ローターアクト、青少年交換、ライラ活動などは実に素晴らしいプロジェクトです。以前、青少年交換の会合に出席させて頂いた際には涙が出ました。しかし、これらの活動のことをあまりにも皆さんは知らなさすぎると感じます。できましたら各クラブでも青少年交換に積極的に参加して頂きたいと思います。またライラ活動も本当にロータリーらしい活動だと思います。今後はライラ活動もインターアクト、ローターアクトと合同で行って頂ければ、さらに有意義になるのではないかと考えます。


第5番目は、「ロータリー財団にご協力を」願いたいと思います。ロータリーはポリオ撲滅のためにも、全力を尽くしています。そのためにビル・ゲイツ財団からは1億ドルの補助金を頂戴し、ロータリーとしては今後3年間にこの金額と同額の資金を用意しようということになりました。したがいまして皆様には是非このことをご理解頂き、併せてご協力を頂戴したいと思います。当然、地区としましても積極的に取り組んでいきたいと考えております。


第6番目に、「クラブ・リーダーシップ・プラン(CLP)を推進する」ということです。組織を扱うことがCLPではありません。自分たちのクラブの欠点をよく調査して、しっかりと現状を認識し、どこを変えれば良いのかを分析し、そのために必要な委員会構成を作って頂くことが重要です。例えば1つの重要な委員会を継続して活動するのもCLPです。CLPの本質をよく理解してクラブの再生、活性化につなげて頂きたい。


続きまして、地区運営方針です。(1)ロータリークラブの魅力を回復し、活性化するために様々な支援を為す。(2)地区指導者・クラブ指導者に対する研修を強化し、各ロータリークラブがロータリーの理念を効果的に実戦できるようにする。各クラブから研修リーダーを挙げていただいて、ロータリーのすばらしさを理解するために勉強会を開催したいと考えます。(3)ガバナー補佐を中心として、各IM単位で、より一層の親睦を高めるための企画を立案する。ガバナーとガバナー補佐は一体ですので、ガバナー補佐制度を中心に運営していきたいと思います。(4)職業奉仕の理念を深めるために、ロータリーの綱領の理解を高めるために、研修会やセミナーを企画する。(5)I.M.を再検討する。最近のI.M.の出席率も問題です。再検討し、I.M.終了後に懇親会などを行うことも考えていただきたいと思います。


次に地区大会ですが、昨今、新しい仲間・友人を得る場所であるということが消えてしまっているように思います。お金を頂くことになるかもしれませんが、有志による懇親の場も考えてみたいと思っています。来年の4月25日・26日、堺のリーガロイヤルホテルにて開催を予定しています。1人でも多くの皆さんに参加していただいて、すばらしい大会にしたいと思います。


いよいよ次年度に向けて出発することになりました。夢と希望、明るい雰囲気に充ちたロータリーにしたいと考えていますので、皆様お一人お一人のお力添えをお願いし、共に1年間がんばって参りたいと思います。